17 接合フレット数

 接合フレット数とは、ボディとネックの接合部分のフレット数をいう。12フレットでボディとネックが接合されているものを「12フレット接合」と言う、また「12フレット接続」「12フレットジョイント」「12F接続」「12Fジョイント」とも言う。ここでは文字数削減の意味で以降は「12F接合」と表記する。

 クラシックギターをはじめ、1930年代前半までのアコースティックギターはすべて12F接合であったが、ハイポジションの弾きやすさから1934年ごろに14F接合が現れ、以降、アコースティックギターは14F接合が主流となっていく。
 14F接合のメリットはハイポジションの弾きやすさとタイトな音質である。したがってブルーグラスなどのジャンルのギタリストのように、フラットピッキング中心に、ハイフレットを多用するプレイヤーに向いている。最近ではフィンガーピッカーもソロ曲などを演奏する機会が多いためハイフレットを多用する。また、変則チューニングも多く、レギュラーチューニングから音を下げる機会が増え、テンションの高めを好むプレイヤーが増えている。このため、14F接合でロングスケール、カッタウェイ付きの人気が高い。

 12F接合のメリットはクラシックギターに似た音の柔らかさと太さ、テンションの低さである。したがって、レギュラーチューニングを主体としたフィンガーピッカーや弾き語りに人気がある。
 アコースティックギターの12F接合には大きく分けて2種類ある。ひとつはクラシックギターやマーチンの0-16NYのように、ボディのくびれから下の最も幅の広い部分であるロウワーバウトの中央にブリッジがあるもの、具体的にいうとサウンドホールの下の部分からボディの下の部分までの中央にブリッジがあるもの。これをここだけの呼び方として仮に12F接合Aとする。
 もうひとつはマーチンのD-28Sのように、14F接合のギターのボディ上部をほぼそのまま12フレットまで伸ばしたもので、先ほどの12F接合Aのロウワーバウトの中央よりもブリッジの位置がサウンドホールに近いものである。つまりこれは、14F接合のギターとブリッジの位置はあまり変わらない。これを仮に12F接合Bとする。

 写真の赤い線はサウンドホールの下と、ボディエンドを表し、青い線はその2本の赤の中央を表している。12F接合Aのギターのブリッジは青い線上にあるが、Bのギターのブリッジは青い線よりサウンドホール寄りにある。数cmのブリッジ位置の違いであるが、このAとBはどちらも同じ12F接合のギターだと言っても、音のキャラクターに違いが生じる。12F接合のギターを見る時は、まずこの二つのどちらなのかを確認する必要がある。

 ギターの音は主にトップ(表板)のサウンドホールよりも下の部分(ロウワーバウト部)の振動により形成される。主な12F接合のギターは12F接合Aで、そのブリッジはロウワーバウト部の中心に来ている。これが14F接合になると2フレット分サウンドホール側に移動するため、ロウワーバウト部の中心より数センチずれた所にブリッジが来る。実際はブレイシング(力木)の関係で、14F接合の多くがサウンドホールの上部まで主な振動部分があるため、サウンドホール上部からボディエンドまでのほぼ中央にブリッジがあることになっているが、サウンドホールやボディのくびれのため、ブリッジ上部の面積は下部より小さくなっている。このため、中心よりやや上にブリッジがある状況と同じになる。この中心からのズレが音質に変化を与える。

 ドラム(太鼓)の皮の中心を叩くと大きな音が出るがやや締りのない丸みのある音になる。徐々に中心からはずしてリム寄りを叩いていくと、音質はだんだん締まったタイトな音になっていく、ただし音量は少しずつ小さくなる。ギターの弦も同じで、開放の音を弦の中央(12F)あたりで弾くと大きく振動するが丸みのある音質で、徐々にブリッジ側で弾いていくと振幅は減るが音も徐々に締まってレスポンスのいい硬めの音質になる。ブリッジのすぐ近くで弾くと高音成分が多い小音量のペチペチした音になる。ロウワーバウト部におけるブリッジの位置はまさに太鼓の皮を叩く位置、弦を弾く位置であり、中心に近ければ振動エネルギーは効率よく大きく伝えられるが、音質は丸みのある太い音になる。反対に中心からずれていくと締まって硬質になりタイトな細い音になる。

 14F接合ギターのボディ上部をそのまま12Fまで伸ばした12F接合Bは、12F接合Aのパターンよりも音色的には14F接合のギターに近く、ブレイシングの変化とボディ内の容量が増えた分14F接合ギターの音に中低音の厚みを加えたイメージの音になる。音に奥行きや丸みが増すが、14F接合との音の差は、Aにくらべて少ないとも言える。

 あくまでもこれらは一般論で、すべての12Fや14F接合のギターの特徴ではない、これらの構造上の音質の利点を生かし、欠点となる部分は他のブレイシングなどの設計や材質の選択などによって補い、そのギターの音を設計する。

 また、まだまだ少数ではあるが、13F接合のギターが存在する。レギュラーモデルの13F接合は以前ギブソンのニック・ルーカスモデルなどがあったが、最近徐々に手工ギターやウクレレなどに見られるようになった。スモールボディで12F接合ではロングスケールにしにくい場合などの理由で13F接合を採用している。音も、安易な表現ではあるが、12F接合の豊かさと14F接合のシャープさの中間となる場合が多いように思う。「私のギター列伝」に13F接合のギター「Santa Cruz H7」を紹介し、そこでも13F接合について述べている。そちらもご覧いただきたい。