22 Simon Ambridge

Simon Ambridge Siries40(クラシックギター)

 クラシックギターをきちんと習い始めて半年が過ぎ、クラギの音の好みや、演奏性の良し悪しが徐々に分かってきたので、クラギのメインをそろそろ探し始めようかと思っていた。

 そんな矢先、グッドタイミングで大阪のクラギ専門店FANAから世界の名器がかなりまとめて入荷したので見に来ませんかとの連絡があり、危険を感じつつ足をはこんだ。ホセロマニリョス、ヘルマンハウザーⅡ世とⅢ世、マルセロバルベロイーホ、マヌエルベラスケス、イグナシオフレタイーホなど「うん百万円」の名だたる世界の名器がズラリと10本ほど並んでいた。とりあえず有名どころから順に弾いていった、さすがに世界の1級品ばかりで、どこが良い悪いではなく、それぞれ音に明確な個性があり、好みの問題で、甲乙は付けがたかった。

 しかし、そのなかで全く知らなかったこのサイモン・アンブリッジを弾いたときに急にビビッときた。ハウザー系の設計で音量はさほどでもないが、艶や深さがある音色は非常に上品で何ともいえない満足感、私には本家のハウザーⅢ世よりも染み入る音に感じた。また、どのポジションでも変わらない音色とバランス、和音でも個々の音が非常にクリアで明瞭な分離の良さ、素晴らしい工作精度の高さで見た目が非常に美しく、ペグは世界最高峰と言われるロジャースが光り輝いていた…

 驚くほどすべての面で私好みであった。その後もかなりの時間をかけ、候補ギターをすべて弾き「アンブリッジが一番気に入りました。おいくらですか?」と店長に聞いたところ、幸いなことに今回弾いた10本の名器のなかで2番目にリーズナブルで、十分手の届く値段である。店長も「もし迷われたらアンブリッジをお勧めしようと思っていました。」とおっしゃる。手持ちの3本のクラギを下取りにして購入した。

 Simon Ambridge(サイモン・アンブリッジ)は1951年生まれのイギリスの新鋭製作家である。高校卒業後、グラフィックデザインと印刷を王立芸術大学で学ぶ、1978年、家具製作のワークショプに通う間に木工に興味を持ちギターが好きだったため、Martinをベースにしたアコースティックギターを製作する。その後すぐにクラギ製作家のKevin Aramの指導のもとでクラギを製作し本格的にクラギ工房を立ち上げる。1991年イギリスのギター製作コンクール入賞。私が購入したときは日本に入りだした頃で、まだ無名に近かった。

 13年間私のクラギのメインであったが、2016年にアンブリッジのクリアな艶のある音に透明感を加え、芯のあるボリュームを兼ね備えたホセ・マリンを購入したため下取りで手放した。