59 Headway HF-415 ARS ATB / 60 HD-115 STD 40th Anniv.

Headway HF-415 ARS ATB / HD-115 STD 40th Anniversary

 Headway(ヘッドウェイ)は日本でのフォークギターブーム終盤の1977年に設立された日本のギターブランドである。Headwayブランドの詳細は「53 Headway HF-408Re」を参照されたい。
 2019年現在のHeadwayギターは、マスタービルダーの百瀬氏および安井氏・降幡氏が個人で受注製作する45~160万円の「HEADWAY Customshopシリーズ」、ベテランビルダー数名の飛鳥チームが作る20~50万円の「Aska Team Buildシリーズ」、通常ラインで作る20~30万円の「Standardシリーズ」(ここまでの3シリーズが長野県松本市で製作されている)  さらに、アジアで製作しフレット・ナット・サドルなどの最終セットアップのみを日本で行った8~16万円の「Japan Tune-upシリーズ」、中国で製作している2~6万円の「Universeシリーズ」の5シリーズに分かれている。

Headway HF-415 ARS ATB
 「HF-415 ARS ATB」のATBは「Aska Team Buildシリーズ」であることを意味する。「Aska Team Buildシリーズ」とは、百瀬氏の弟子で10年以上のキャリアを積んだ数人の厳選メンバーによる2011年に発足した「飛鳥チーム」が長野県の飛鳥工房で厳選された材で製作しているシリーズである。高精度な作業を必要とする「ネックの後仕込み」や、「アリ溝ジョイント」などの手法を採用し、ギター製作の全工程を一人で行う手工ギターと、多くの人数で分担し流れ作業で製作される量産ギターの中間的方法で作られているモデルである。

 また、ARSは「アドバンスド リア シフト」のことで、XブレイシングのX部分の交点を通常(サウンドホールから38mm)より8mmブリッジ側(サウンドホールから46mm)にしている。これは、強度は増すが鳴りが少し犠牲になると言われていたが、これをカバーするためにスキャロップブレイシングにした。結果1・2弦の存在感が増し、全体的にバランスの良い音に仕上げている。ARSについてさらに詳しい説明は非常に長くなるので、Headwayギターのホームページの「ARS(アドバンスドリアシフト)ブレイシングについて」を参照されたい。ただし、音への影響を対応しつつも強度を優先したリアシフトに上位機種を移行した理由については触れられていない。

 このように、「Headway HF-415 ARS ATB」は、カスタムショップシリーズは高すぎて手が出ないが、手工ギターのような丁寧な造りと良い音色が欲しい方に人気の飛鳥チームビルドシリーズで、最新のARSブレイシングを採用したモデルになっている。オーソドックスなデザインではあるが、厳選された材と半手工による精巧な製作、さらに非常に薄いウレタン塗装のため、Martinサウンドをタイトにしバランスを整えたような、扱いやすくフィンガーにもストロークにも対応できるオールマイティな音を生んでいる。

 さらに、このギターのラベルには「Headway HF-415 ARS ATB C,O」と書かれており、最後のC,Oはカスタムオーダーを意味していると思われる。このため、2017年のHeadway40周年アニバーサリーモデルとして、2017年サウンドメッセにも出品された通常のレギュラーモデルと相違点も見受けられる特別仕様となっている。おもな相違点は、材のグレードアップ、ヘッドのロゴがHeadway GuitarからHeadwayのみに、ペグがゴトーの通常ロトマチックからゴトー最高級510シリーズのオープンバックに、ナット幅が43mmから42.5mmに、などである。この2018年製カスタムが全く弾かれた痕跡がない新品同様の無傷中古品で手に入った。ARSブレイシングにより音への犠牲を抑えつつ強度が上がっているため、毎日酷使するレッスン用ギターとして活躍してくれそうである。

Headway HD-115 STD 40th Anniversary
 「HD-115 STD」のSTDは「Standardシリーズ」であることを意味する。「Standardシリーズ」とは「飛鳥チーム」に若干の若手を加えたチームが長野県の飛鳥工房で製作しているシリーズである。(2017年に楽器店のインタビューでHeadwayアコースティック部門責任者の安井氏が「STDとATBの違いはネック仕込みとロッドの材質以外はやっていることも作っている人間も全て同じです。」と言っている。しかしそれ以前からSTDはボディのみ国内の他の工房が製作しているとのメーカーのコメントがあったという話もあり、詳細は不明である。私個人は作りも音も満足しているのでOEMか否かは気にしていない。)
 「40th Anniversary」はHeadway設立40周年の記念限定モデルであることを意味する。1977年に設立されたヘッドウェイ社は同年4月にヘッドウェイ工場を設立し、MartinギターD-28を分解して研究するなど様々な準備を経て、その年は3本の試作を作った。そのうちのひとつのモデルがHD-115であった。これを復活させたのがHD-115 STDである。2017年の40周年記念アニバーサリーモデルのHD-115 STDは、通常のHD-115 STDとは以下の2点が異なる。通常はデカールであるヘッドのロゴがATBシリーズと同様の白蝶貝の埋め込みになっており、ヘッドの裏には「40th Anniversary」とレーザーで刻印されている。

 このように、「HD-115 STD」は、総単板の日本製で丁寧な造りと良い音色が欲しい方に人気のモデルである。往年の名器であるHD-115を現代に復活させ、精巧な製作技術とフォワードシフトのスキャロップブレイシングのため、軽く弾いても豊かに響き、レスポンスも良く、フィンガーにもストロークにも対応できる豊かな音を生んでいる。この2017年製40周年記念限定モデルがほぼ無傷の中古品で手に入った。ただし、弦高が低すぎて私のタッチではフラットピッキングにおいてバズが出たためロッド調整およびサドル交換を行なった。レッスン用ギターにも生徒用貸し出しギターにもドレッドノートサイズがなかったため、今後重宝しそうである。

 「Aska Team Buildシリーズ」と「Standardシリーズ」の違いであるが、STDはATBの「アリ溝ジョイント」などの複雑な手法は採用せず、通常方法で製作されているモデルである。しかし、工作精度はそのネックジョイントを除けば、どちらも素晴らしいものであり外観からの大きな違いは感じられない。ブリッジピンについてはATBはピン穴に弦を通す溝がありピン自体には溝がないもの、STDではピン穴には溝がなくピン自体に溝があるものとなっている。トラスロッドはATBは鉄芯でSTDはアルミチャンネルになっている。材についてはATBの方が目の詰まったより上質なものが使われている。木目などはギャラリーに比較画像があるためそちらをご覧いただきたい。音についての違いは、この2モデルの比較においてはボディシェイプや弦長が異なるため述べるのは難しい。感覚的に言うと、ATBの方がネックジョイントやトラスロッドや材の違いの分、深みのある音のようにも感じられる。なお、ギャラリーや仕様一覧をご覧の際は、このHF-415はカスタムオーダー、HD-115はアニバーサリーモデルのため、通常モデルとは異なる点があることをご注意いただきたい。


 最後に、2017年は百瀬氏ひとりであった「HEADWAY Customshopシリーズ」が、2018年に安井氏と降幡氏が飛鳥チームから加わり3人になっている。今後も増えることが予想され、飛鳥チームがなくなるのではという噂がネットで出ている。しかし、降幡氏は飛鳥チームのリーダーでもあるようで、Customshopシリーズを作成しつつ飛鳥チームにもかかわっているようである。