32 Gibson Southern Jumbo

Gibson Southern Jumbo

 1970年代前半、中1でアコースティックギターを始めて、1年ほど経つとストロークでの歌伴奏に飽き、徐々にフィンガーピッキングへと移行して行った。そして3年後にポール・サイモンのフィンガーソロ曲のアンジーに出会い、ラグタイムなどのフィンガーソロ曲に傾倒していく。1970年代当時、フィンガーソロ奏者は日本では中川イサト氏くらいでほとんど存在せず、海外のミュージシャンばかりであった。海外フィンガーソロ奏者の使用ギターはほとんどがMartin、一部Guildという状況であった。

 Gibsonを使用しているプロミュージシャンはロッカーなどが多く、ストロークなどでの歌伴奏での使用が中心であった。Gibson使用のソロフィンガーピッカーはジョン・レンボーンとゲイリー・デイビスおよび一部のブルースマンくらいであまりいなかった。フィンガーピッキング主体のシンガーではジェームス・テイラーがいたが、彼はハウリング対策としてGibson J-50のサウンドホールをふさぎ、当時ようやく出回りだしたバーカスベリーのピックアップをブリッジに貼りつけて使用していた。

 当時の日本で見かけるGibsonアコースティックギターといえば、アリスの谷村新司のDoveや、古井戸のHummingbirdなど、スクエアショルダーの派手なギターが多く(1970年代はJ-45もスクエアショルダーであった)ラウンドショルダーモデルは吉田拓郎の1967年製のJ-45くらいであった。しかしいずれもGibsonは激しくかきむしるストローク中心の歌伴奏で使われているイメージが強かった。これは、当時の私のプレイスタイルではなく、大きく分厚いピックガードがいかにもトップの振動を邪魔していそうで、Martin派の私はあまり興味を持たなかった。このため、1970年代当時の私の中では、フィンガーピッキングやスローストロークはMartin、12弦はGuild、激しいハイテンポストロークはGibsonというイメージがあった。

 30年経ってもこの固定観念は残っており、ジャカジャカと歯切れの良いストロークをするのはGibsonがいいなと思っていた。Gibsonならラウンドショルダーのサザンジャンボがいいなと思っていた。サザンジャンボは人気のラウンドショルダーボディの定番J−45の上位モデルで、指板にダブルパラレルグラムのパールインレイ、ヘッドのロゴも豪華である。しかし、今でもフィンガーピッキング主体の私にとって、Gibsonのレギュラーモデルに何十万円も出すのは少し躊躇していた。お買い得感のある中古を見つけたら検討しようと思っていた。

 いつもどおり何気なくネットで商品検索していたら名古屋のリサイクルショップのHPで手ごろな価格の2004年製のサザンジャンボを発見した。高校時代あこがれていた世界の三大ギターメーカーのMartin・Gibson・Guildのうち、MartinとGuildを所有していたため、ラウンドショルダーでサンバーストのGibsonも、やはり1本は欲しいという非常にミーハーな欲望に負けて電話で購入し送ってもらった。