54 Anchan (Gibson LG-3 Type)

Anchan (Gibson LG-3 Type)

 Anchan(アンチャン)は北海道のルシアー、安藤氏が製作する手工ギターのブランドである。新品販売は主にヤフーオークションで行われていたため定価がない。新品のフラットトップギターは十万円台後半で落札されていたようである。(ただし、2020年を過ぎたあたりから注文製作が増えたためか、ヤフオクへの新品出品は無くなったようである。)
 AnchanのJ-45タイプの中古を大阪の楽器店で見つけ非常に良質のギターだったため即購入した。Anchanをとても気に入った私はその後、安藤氏と連絡を取り00サイズとドレッドノートサイズのギターを直接注文した。これらの詳細は「私のギター列伝」の「44 Anchan (Gibson J-45 Type)」「50、51 Anchan (00、D)」をご覧いただきたい。
 
 その後、YahooオークションにAnchanのLGタイプの中古が出た。新品同様品でかなり状態は良いという。クラシックギターほどのコンパクトなLGボディで薄めのラージピックガード仕様、フィンガーピッキングにもストロークにも対応できそうである。AnchanのJ-45タイプと00とDを所有していた私はLGタイプにも興味を示し、「生徒さんが2本目のギターが欲しいといった時にも勧められるなぁ。」との思いもあり、とりあえず入札しておいたら、何とか落札できた。
 数日後、弾いていた形跡は全くない新品状態のギターが到着した。予想通りのAnchanらしいギターで、手になじむネック形状、低いのにビビらない弦高と、絶妙なテンションによる最高の弾きやすさ、正確な音程、レスポンスよく飽きのこないプレーンでストレートな音色、大きすぎない中高音寄りバランスの音量、比較的ストローク向きではあるが、アルペジオもフィンガーソロも無難にこなす。まさに手軽でオールマイティーなギターであった。新品同様であったので生徒さん用としてしばらく置いていたが、弾くほど私のレッスン用ギターに最適ではないかという思いが大きくなっていった。
 レッスン時に私が弾くギターは、生徒さんに音がよく聞こえるように倍音は少なめの通りの良いストレートな音色がよい。しかし音が響きすぎると生徒さん自身の音が聞きとりにくくなるので特に低音のボリュームは抑えめがよい。さらに毎日長時間弾くので、小さめのボディで手への負担が小さいソフトな弦テンションの弾きやすいものがよい。しかし、ストロークやフラットピッキングも多用するので弦テンションはソフトな中にもしっかりとした芯のあるものが望ましい。このAnchanのLGタイプはショートスケールではあるが、ぶ厚めのトップとテーパーの付いたノンスキャロップブレイシングのため、ソフトではあるが芯のある絶妙な弦テンションになっており、フィンガーにもストロークにも幅広く対応できる。これらの条件からこのギターは私の思うレッスン用ギターにまさにピッタリであった。
 このため、レッスンで時々使用していたが、長く使える2本目が欲しいという手が小さめの生徒さんの条件にこのギターがピッタリだったため、お譲りした。LGサイズはレッスン用に最適だったため、サイドがインディアンローズウッドでもう少し重厚な音質のLGサイズのAnchanギターの製作を安藤さんにすぐにお願いした。その7か月後に新しいLGサイズのAnchanギターがやってきた。そのギターの詳細は「私のギター列伝」の「57 Anchan (LG Size)」をご覧いただきたい。

 GbsonのLGモデルについても述べておこう。LGは0と1と2と3の4種類がある。まずLG-1、LG-2、LG-3がJ-45やSouthen Jumboと同じ1942年に発売された。ボディサイズは同じであるが、LG-2とLG-3はアコースティックギターでは一般的なXブレイシングで、LG-1は戦後から簡素なラダーブレイシングである。 このため、LG-1はLG-2や3よりも音量はあるが締まりのないボワンとした音になる傾向がある。このチープな音が「味がある」というファンも多い。
LG-2とLG-3は、LG-2がサンバーストフィニッシュでLG-3はナチュラルフィニッシュという塗装色の違いのみとなっている。LG-0は1958年に、LG-1をマホガニートップにした廉価モデルとして発売された。
 1960年代に入ると、LG-1は生産終了となり、LG-0はB-15に、LG-2とLG-3はそれぞれB-25とB-25Nに名称変更されている。
 このAnchanはLGボディ、Xブレイシング、ナチュラルフィニッシュであるのでLG-3タイプ(あるいはB-25Nタイプ)といえる。